どうも、りょうかん(@ryokan_1123)です。
11月18日にスタンダードブックストアの中川和彦さんと東京R不動産の吉里裕也さんをゲストに招いて開催した『人が集う場所』がテーマのトークライブ。
その内容を書き起こして編集しました!
時間が空いてしまい、アップされるのを待ち望んでいた方もいらっしゃると思います。
全部で2時間分の内容を余すことなく伝えたかったので、長いですが三部編成になってしまいました。
ゆっくりと時間をかけて、スルメをしゃぶるように、読んでもらえたら幸いです。
前編・中編に続く、第三部の最後の後編。
人が集う場所のヒントがたくさん詰まった話から、最後は地域の在り方や鳥取の魅力について語ってもらってます。
前編はこちら
中編はこちら
実施:2015年11月18日
とにかく居心地のいい空間にしたい(中川)
質問者 中川さんから「アメリカ」というキーワードが何回か出てきましたが、中川さんの思うアメリカの魅力を教えてください。
中川 自由なところです。
僕、今54歳なんですけど、僕らの世代ってアメリカに弱い感じなんですよ。
アメカジなんて言葉もなかったから、正直高校生から着てるものは一緒だと思うし。(笑)
吉里 中川さんって自由人だよね。(笑)
中川 そうですね、僕、自由人ですね。(笑)
岡田 中川さんの考える〝自由〟って何ですか?
中川 僕、人からごちゃごちゃ言われたりするのがあんまり好きじゃない。だから、うちのカフェは本の持ち込みに制限なんてしてない。
岡田 制限しないことが自由ということですか?
中川 例えば、持ち込み2冊までって決めたら、それ以上持ってきてる人たちにうちのスタッフが監視委員みたいに干渉することになっちゃうでしょ。
仕事に忠実な人ほど干渉してしまうから、それってお互いに面白いのかなって思っちゃうの。
とにかく居心地のいい空間にしたいから、だから自由にしてる。
岡田 なるほど。
イメージ的には吉里さんも自由な感じがするんですけど、どうですか?
吉里 そうだなぁ。朝起きて好きなことが出来るっていうのが、一応目指すところで。必要なことは、出来るだけ依存しない状況を作ること。
でも、それを全部目指すと悪ノリなハードコアになっちゃうので、程よく、感覚としてはどこでも生きていけますみたいな状況作りを求めてる。
中川 うちはルールないって言ってるんだけど、実はあってですね。
岡田 それはどういうことですか?
中川 うまく言えないけど、例えば店主が一人で切り盛りしていて結構人が入ってる居酒屋があったとして、そこで勝手にビールを取ってって自己申告するとか。
はっきりとルールとして明文化されてるわけじゃなくて、その居心地の良い場を保つための共通認識としてある、というのがいいなと思う。
岡田 いいですね〜。ホンバコもそうありたいです。
会場の2Fに入りきれない人のために1Fでも生中継
仲間がいるから行く(吉里)
質問者 お二人にとって集う場所ってどこですか?
吉里 僕は一人で飲みに行くっていうもあんまりしないし、銭湯も集う為に行ってるわけじゃないから、オフィスかもしれないですね。
岡田 オフィスですか。
吉里 僕らって、基本オフィスに行かなくてもいいんですよ。行くとしても打ち合わせくらいでいいし、仕事は移動先とかホテルでもできる。後は現場か。
にも関わらずオフィスに行くのは、わざわざ家で出来るのにやりに来てるというより、仲間がいるから行くっていう感覚が大きいなぁ。
中川 僕も考えたら自分の店かなぁ。
プライベートの時間がそんなにないから、イベントでこうやって知り合いが来てくれるから店に集うって感じなのかも。
岡田 なるほど、僕もそうかもしれないです。
中川 集うって感じじゃないかもしれないけど、一人でふらっと飲みに行った時に知り合いがいて、知らないうちに集っているっていうことはあるかもしれないね。
でも、そういうスペース持ってるって言うのは大きいですよ。
岡田 本当にそう思います。
仕事場がそういうところっていうのは幸せなことですよね。
中川 そうだね~。今、改めて思いましたね。
あとは、両極端だけど知り合いが来ないバーかなあ。
一人になりたいときに。(笑)
一同 (笑)
吉里 さっき言ったみたいにR不動産って元々個人事業主の集まりだったんで、最初の頃は、それぞれのオフィスはあっても、みんなが集まれるオフィスっていうのは無くて、メールで報告したり、たまにどこかで集まったりするしかなかった。
岡田 オフィスなかったんですね。
吉里 そう。それがあるときに、みんなが集まれる場所があったらいいんじゃないかってことで便利な場所にオフィスを借りたんですよ。
集まる必要はないんだけど、気付いたらいつも5~6人集まるようになってた。そしたら不思議なもんで、それから業績がかなり上がったんですよ。
岡田 へー!それは凄い話ですね!
吉里 今でもそうなんですけど、特にR不動産の営業フタッフは、出勤時間も休憩時間も決まってないし、来ても来なくてもいいんですよ。でも、なぜかみんな来る。
だから、場所をリアルに持つってことは結構重要なことで、単なる働く場っていうのとまた違うと思うんですよね。
中川 今、茶屋町にあべのと心斎橋に3つ店があるんですけど、心斎橋の店にいることが一番多くて、他の2つにはあまり行けてないんですよ。
心斎橋でイベントをすることが多いからそれもあって。
岡田 イベントがあると、その場にいることが多くなりますもんね。
中川 でももしかしたらそこの2つの店舗でも、イベントしたら良く行くようになるのかもしれない。そうすることでスタッフと同じような空気感を共有できるんじゃないかなと、今思いました。
実際に自分で地域を見た方がいい(吉里)
質問者 全国色々な地域を回ってると思うんですが、あまりブームになっていない地域で面白いものってありましたか?
吉里 難しいですね。
例えば、岡山市の問屋町は面白いって話は良くします。
岡田 問屋町、出ました。
参考記事
吉里 そこは10年ぐらい前までは何もない問屋街だったんだけど、一軒一軒、家具屋やオフィス、古着屋なんかができることによって街がガラッと変わっていったんですよね。
今は300店舗ぐらいある街になっていて、家賃も一番安い時の6倍ぐらいになった時期もあるんです。
岡田 6倍はすごい!!
吉里 街の見方って色々あるんですけど、アメリカみたいに本当の意味でのディベロップメントが行われて、それが上手くいくと家賃が50倍にまで跳ね上がることはあっても、日本では歴史が長い分だけ家賃が何倍になることってほぼ無いわけですよ。
でも、それが日本という島国の中で起こったっていう意味でとても面白いなと思ってます。
岡田 他に面白いと感じた地域ってありました?
吉里 ローカルな地域に行ったときの個人的な相性ってすごくデカいと思ってて。最近は、個人的な感覚ですけど直感的にいいなっていうのが感じられるようになってきた。
鳥取とか宮崎とかは、自分の中ではこうカチッと感じた。
中川 宮崎は、宮崎市内?
吉里 宮崎市内と青島。
正直、尾道とかはくるかな~って思ってたけど、自分の中ではこなかった。
岡田 意外ですね。
吉里 もちろん行って良い街だなぁって思うし、楽しかったんだけど、結局合う合わないっていうのは個人的な話で、移住するときも「どこが良いですか」って聞かれるけど、実際に自分で地域を見た方がいい。
人口が減っても仕事は減らない(吉里)
質問者 松江から来たんですけど、松江市はどうですか?
吉里 あ~…、僕、まだ島根の方に行ったことがないんですよ……。
中川 僕は島根めっちゃ好きですよ。
質問者 鳥取も島根も人口減少が問題になってるんですが、不動産の観点から見るとまだまだ伸びしろがあると思われますか?
吉里 いけると思いますよ。
まあ「いける」というのもどこを目指すかによるんですけど。
岡田 というと?
吉里 観光で人を呼び込むのか、住んでいる人をハッピーにするのかっていう、ざっくりと2つの方向性があると思ってて。
この間行った福井なんかは、鳥取と似たような感じなんだけど観光で人を呼び込める資産がない。でも、彼らはいっそ開き直って「自分たちが楽しく暮らせてればそれでいいですよ」と言ってたんです。
それってある意味で正しいし、彼らはたぶん自分の暮らしのことを中心に考えてる感じがするんですよ。
岡田 なるほど。
吉里 観光と違った話で、例えば「人口減って空き家が出来てるけどホントにいいの?」と聞かれた時に「別にいいんじゃない」って答えるんです。
限界集落をどうしたらいいかとか、コンパクトにまとめるべきか残すべきかって話はあるけど、もっと紐解いて考えると、昔から人が住んでいた集落である以上住みやすいはずで、どこでも選んでいいよって状態でそこに住み始めたわけだから。
岡田 確かにそうですよね。
吉里 今でこそ、道路やら通信インフラやら言われてますけど、昔は道路や電気がなくても生活出来てたわけで、それをどうしろって言われても釈然としない。僕個人の観点からすると、自然の流れに任せるべきじゃないかなっていう風に思えて。
地方創生とか地域特有のオリジナリティを出せとか、流され過ぎなんじゃないかなって最近は感じてます。
中川 例えば、地方や街に関わってると、問題になってくるのは勤め先や産業になってくるんじゃないかなって思うんだけど、どうなの?
吉里 これは僕の言葉じゃなくて、四国食べる通信のポン真鍋って人の言葉なんですけど、『人口が減っていっても仕事は減らない。』っていう。
どういうことかと言うと、人口が減るというのは働き手が少なくなることで、そうなると働き手が欲しいってことになるっていう。確かに理屈的に考えればそうだなぁって思ってて。
岡田 理屈的にはそうですよね。
吉里 あと、仕事って本来何かって考えた時に、何かをして誰かを喜ばせることじゃないって捉えると、それっていっぱいあるよねって。それの対価がお金だけじゃなくて、例えばご飯を食べさせてもらうっていうのでも十分じゃないかってなる。
そう考えれば、何とかなるんじゃないかなって感じに思えてこないですか?
要は無理する必要はないかなって思うんです。
岡田 今の話を聞いて思ったんですけど、僕の中では尾道ってそれに近いなって思ってるんですよ。ちょうど1年前ぐらいまで尾道のゲストハウスでヘルパーをしながら住んでたんですけど、あの街はまさに自分たちが仕事を楽しみながらやっていて、お金以外の対価で経済が回ってる部分もあったんです。
吉里 そうだよね、尾道にいたんだもんね。
岡田 逆に知ってる人がいないと面白くないかもしれないですけど、僕はアメリカに似た自由な空気感があの街にはあるんじゃないかなって思ってます。
参考記事
実際に行ってみなきゃわからん(中川)
岡田 最後に、お二人から見た鳥取の印象を聞いてみたいんですが、どうですか?
吉里 金沢で育ったので、しっくりくる感覚がありました。海の位置とか日の昇る方向とか。それって多分日本海側で暮らしてない人は違和感を感じると思うんですよ。
だから、しっくりくるのかも。
岡田 それは何となくわかりますね。
吉里 あと、鳥取にくるのは1年ぶりなんですけど、自分には合ってる感じがあって、多分それは人の魅力なんだろうなって思います。
他の地域でも魅力的な人に会う機会は多いんですけど、鳥取はそういう人が集まってる感じがする。それはもしかしたら偶然そういうコミュニティに当たっただけかもしれないし、これが鳥取の特徴なのかわからないけど、みんなに会いに来たいって気持ちが大きい。
中川 この街って、風光明媚な所や名所なんかも多いけど、やっぱり人なんだよね。
吉里 リピートしたいと思うのって、飯が美味しいか、人が良いか、なんですよね。
そういうのって、しばらく行ってなかったら食べに行きたいとか会いに行きたいとかっていう動機になる。
中川 美味しいものがあってもやっぱり人じゃないかと思いますね。今日も県庁の人に連れられて色々なところに行ったんですが、やっぱりその土地の人が食べてるものを頂くのが本当に嬉しいと思って。
岡田 確かに僕も旅してる時はそうでしたね。
中川 松山行った時もそうだったんですが向こうの人がいつも食べてるご飯にお味噌汁、じゃこ天に漬物を頂いて本当に幸せな気分になったんですよ。それが凄く印象に残ってて、それは作ってくれた人の面影が分かるって言うのがいいと思うんですよね。
岡田 そういうの、本当にいいですよね。
中川 鳥取の印象で言うと、大阪から近いんですが、意外と来ていなくて。
以前の鳥取のイメージってカニと梨ぐらいで、砂丘も今日の昼初めて行ってきたんですけど予想以上に広くて。
「あぁ、これは実際に行ってみなきゃわからん」と思いましたよ。
岡田 砂丘は思ったより大きいんですよね。(笑)
中川 あと、僕の中では、焼き物の延興寺窯がアツくて。
そこの土地で取れた土や釉薬や薪なんかを使って作ってるんですけど、実際に使ってみると作り手の性格が作品を通じて伝わってくるんですよ。そういうのが溢れているところが魅力的だと思いますね。
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吉里 それの話に加えて、僕等の感覚でいいなっていう物件が凄く多いですね。
中川 それは具体的に言うと、どういうこと?
吉里 同じような年代に建てられた物件が結構残ってるんですよ。時代ごと、年代ごとの特徴がある家が、今まで見てきた中でもたくさんある。
だから、僕らからするとポテンシャル物件というか、お宝物件を見つけたような感じ。
普通の雑居ビルでもかっこいい。
中川 めちゃめちゃ楽しい街だよね。
吉里 街の中にある建物を上手く使えば、魅力的な空間が結構あると思いますね。
岡田 本当にそう思います。僕自身も、これからもそういう建物を上手く使っていけたらと思ってます。
そろそろいい時間なので、このあたりで終わりにしようと思います。
たくさん今後のヒントをもらえた気がしてます。
お二人、今日は本当にありがとうございました!!
中川・吉里 ありがとうございました。
編集後記
今回、吉里さんと中川さんというビックスターをお二人もお呼びして『人が集う場所』をテーマにトークライブを開催させてもらったのですが、このテーマを考えた当初(ホンバコがオープンして5ヶ月ほど経った頃)、僕の中ではイメージしていた理想から若干ずれ始めてる感覚を抱いていました。
その違和感を脱却するヒントを掴もうと思い、今回のテーマを決めたのです。
トークライブを終え、『人が集う場所』のキーワードは[自由]と[自立]だと感じました。いや、〝再認識〟したと表現した方が正しいかもしれません。
ある種の暗黙知のような良い意味で空気を読むことで成り立つ規律の中に、自立した個人が集まることで生まれる自由な空気感。
ヒッチハイク旅をしている時、僕が楽しいと感じた街には必ずあった「居心地が良く人が集まってゆるいコミュニケーションが自然発生する場所」の条件は、これかもしれません。
そして、この条件が揃う場所にこそ、人は集う。そんな気がしてます。
こんな場所が自分の暮らす街には絶対にほしいと思ったからこそ、僕はホンバコをやることを決意し、今もこうして続けているのだと、改めて思い出させてもらえました。
きっと、その時々の状況に応じて、ホンバコのスタイルや在り方は変化していくはず(そうでなければならない)ですし、それは僕自身も予想してない方向にいくこともあるでしょう。
しかし、常に[自由]と[自立]という部分を意識しながら、(僕にとって)居心地の良い場所であり続ける努力は続けていきたいと思います。
良ければ、今後もホンバコと岡田良寛にお付き合いください。m(__)m
最後になりますが、吉里さん、中川さん、ありがとうございました!
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