どうも、りょうかん(@ryokan_1123)です。
伊坂幸太郎さんの小説「砂漠」を読みました。
というわけで、この記事では、【小説「砂漠」の読んだ感想(書評)】を書いていきます。
大学時代の淡さを思い出させてくれる小説「砂漠」
概要は下記の通り。
作品名 | 砂漠 |
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著者 | 伊坂幸太郎 |
初版 | 2005年12月 |
出版社 | 実業之日本社 |
文庫頁数 | 512ページ |
執筆時点(2019年6月28日)では、『ハードカバー版』と『文庫版』と『Kindle版』が販売されています。
著者:伊坂幸太郎(僕を小説の世界に連れてきた人)
著者の伊坂幸太郎さんについても、簡単に説明しておきます。
名前 (よみがな) |
伊坂 幸太郎 (いさか こうたろう) |
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生年月日 | 1971年5月25日 |
代表作 | 重力ピエロ (2003年) アヒルと鴨のコインロッカー (2003年) ゴールデンスランバー (2007年) |
受賞歴 | 新潮ミステリー倶楽部賞 (2000年) 吉川英治文学新人賞 (2004年) 本屋大賞 (2008年) |
読書好きの人にとってはお馴染みの小説家だと思います。
ちなみに、僕が中学時代に小説にハマったきっかけは、伊坂幸太郎さんの3作目「陽気なギャングが地球を回す」でした。おそらく僕が人生で最も多く読んだ著者じゃないかなと!
ストーリー概要:仙台の大学生たちの4年間の物語
ネタバレしない程度に概要を説明してみます。
メインの登場人物は下記の5人。全員仙台の大学に進学した同級生です。
✔︎ 北村(主人公)
何事にも冷めた性格で「鳥瞰型の学生」と揶揄される
✔︎ 鳥井
軽薄でそこそこ裕福な家庭に育つ(終盤のキーマン)
✔︎ 西嶋
極端な正義感と独特な言い回しが特徴的な名言メイカー
✔︎ 東堂
大学イチのクールな美人だけど、ナゼか西嶋に惚れてる
✔︎ 南
不思議な能力が使える女の子(鳥井の中学の同級生)
登場人物に『東西南北』が付くため(?)、麻雀を楽しむシーンも出てきます。
彼らが過ごす大学4年間のうちに起きる様々な出来事(空き巣と退治したり、連続通り魔と戦ったり、超能力対決したり…etc)が、ありふれた日常のようで二度とない奇跡だったということを伝えてくれる物語です。
【書評】その気になれば奇跡も起こせる【ネタバレ】
前置きはこの辺にして、感想を書き残していきます。
西嶋の名言が素晴らしすぎる
登場人物の中で「西嶋」のキャラが凄まじいほど良くて、彼の残す名言の数々に心を撃ち抜かれ続けました。いくつか紹介します。
その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ。
何に対しても他人事みたいな若者がね、世の中を悪くしちゃってるんですよ。
北村とか鳥井みたいな賢い奴はね、先のことを考えすぎるんですよ。馬鹿になればいいんですよ。
今、目の前で泣いてる人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ。
笑ってる東堂の隣にいるのは、俺じゃないと嫌だって思ったんですよ。
一覧で書き出してみると、全部の語尾が「ですよ」でビックリしました(笑)
個人的に一番好きだったのは、大学イチの美人・東堂からの告白を一度断っている西嶋が、終盤で語った最後の名言。「笑っている東堂の隣にいるのは、俺じゃないと嫌だって思ったんですよ」です。
あの西嶋がこんなクサい台詞を言うなんて・・・とひとりでジーンと感動してしまいました。
主人公が「鳥井」じゃなく「北村」である必然性
あと、設定上の主人公は「北村」になってますが、物語自体の主人公は「鳥井」なんだと感じました。
他のメインメンバー全員が『東西南北』の付く中で、ただひとり関係のない苗字だから、という理由もありますが、内容も読んでみると物語は「鳥井」を中心に回っていることがわかります。(西嶋に引っ張られることもあるけど)
だけど、空き巣の車に轢かれて片腕を無くしたり、愛する南を守るためにキックボクシングを真剣に習ったり、強烈な出来事とともに物語の根幹ど真ん中を走る鳥井の目線では、話がうまく進められない。
だからこそ、「鳥瞰型の学生」と揶揄された北村が、物語のストーリーテラーとしての役目を果たすために仮の主人公に据えられているんじゃないかなと。
いつか「鳥井目線」での物語も読んでみたい気持ちになりました。
幹事役の「莞爾」の存在が大学生感を醸し出している
めちゃモブキャラですが、大学の同級生でコンパの幹事役を務めることの多い「莞爾」の存在が、物語をグッとリアルな大学生のストーリーに近づけているとも感じました。
一応全員大学生の設定なんですけど、メインメンバーたちのキャラが濃すぎるので、彼ら彼女らだけだと大学生臭が薄れてしまう。
そこで効いてくるのが「莞爾」の存在なのかなと。
そんな彼が最後の最後、卒業式の場面でコソッと伝えた言葉(下記)に、僕はガシッと心を掴まれました。一節すべてを引用します。
莞爾は小さく笑い、「俺さ」と口ごもった。照れ臭そうに下を向く彼はどうにも彼らしくなかったが、しばらくして顔を上げ、「本当はおまえたちみたいなのと、仲間でいたかったんだよな」と口元を歪めた。
俺と鳥井は顔を見合わせ、何と答えたものかと困惑し、「へえ」と言うことしかできなかった。
「まあそういうことで」莞爾は言うと踵を返し、自分たちの仲間のもとへと戻って行く。
引用:小説「砂漠」
なんかグッとくるのは僕だけですか??
もしかしたら『莞爾』という存在は、(鳥井や北村たちのような青春を歩みたかった)読み手である僕らのことなのかもしれません。
実業之日本社文庫版に書き足された「あとがき」の妙
僕が今回購入した2017年10月発売の【実業之日本社文庫版】のみに書き足された「あとがき」があります。
この中の『西嶋の台詞のこと』という部分が好きだったので、紹介しておきます。
■ 西嶋の台詞のこと
「砂漠に雪を降らす」というフレーズが作中に何度か出てきますが、申し訳ないことに、この言葉に特に思い入れはありませんでした。タイトルに絡めた「無茶なこと」を西嶋に言わせたかっただけで、はじめは、「砂漠に雨を降らせましょう」と書いていたのですが、「雨くらいは降るだろうな」と思い直し、「じゃあ、雪にしておこうか」と書き換えた、という程度の発想でした。(略)ただ、ちょうど今年、「砂漠に雪が降った」というニュースを見て、はっとしました。2016年12月にサハラ砂漠に雪が降ったそうです。
(略)作中の登場人物はあくまでも架空の存在ですが、それでも、「砂漠に雪が」のニュースを知った時には、「ほら、降ったじゃないですか」と自慢げに言う西嶋を思い浮かべたくもなりました。
引用:小説「砂漠」
サハラ砂漠に雪が降ったことは1979年にもあるようですが、積もったのは2016年が初めてとのこと。そんなタイミングで新装版の発売になることが痺れるなと。
そして、西嶋が「ほら、降ったじゃないですか」と言うシーンが容易に頭に浮かぶようで、またもや顔がニヤついてしまいました(笑)
まとめ:現役大学生にオススメしたい伊坂小説!
28.5歳で「砂漠」を読んだ僕。だけど、この小説は20代前半の大学生の頃に読んでおくべき作品だと感じました。
このモラトリアムがどれだけ貴重なものなのか
取り戻せない時間を惰性的に過ごしてはないか
何も行動に移してない自分は滑稽ではないのか
きっとあの当時に読んでいたら、そんなことを感じたんじゃないかなと。
でも、20代も後半になった僕は、当時の懐かしむことしか出来ません。あの時に戻りたいと思っても僕の人生は先に進むしかないわけで、そんな切なさも感じさせられます。
(だからこそ大学生のうちに読んでおきたかった…!!)
最後に、作中で(確か)東堂が語った台詞を送って、この記事を終えます。
じゃあ、何のことなら必死にやるのかって思わない?
結局さ、いざという時にはやる、なんて豪語してる人は、いざという時が来てもやらない。
というわけで、今回の記事は以上です。
では、また!