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【書評】世界的ベストセラー本の日本語訳版「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」が凄すぎた!

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どうも、りょうかん(@ryokan_1123)です。

ヤニス・バルファキスさん(翻訳:関美和さん)の「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を読みました。

この本は、ギリシャ経済危機の際に財務大臣を務めていた著者が、オーストラリアで育つ娘(10代半ば)に向けて本音で「経済」を解説してる内容です。そして、世界経済の本質を垣間見えるだけでなく、人類がどうあるべきかを問いかける一冊となっています。

✅ 海外の財務大臣クラスが語る「経済論」を知りたい
✅ 世界的なベストセラーとなっている書籍を読みたい
✅ 常識と言われる経済学の通説に違和感を抱いている

という人にぜひ読んでいただきたい一冊です。

当記事の内容

✔︎ 「父が娘に語る 経済の話。」の概要を解説
✔︎ 読んでいてハッとさせられた文章を紹介
✔︎ 本書を読んだ個人的な感想

「とんでもなくわかりやすい」というタイトルが付いていますが、どちらかと言うと難解な書籍だと感じました。経済的な基礎的な知識が足りないと理解に苦しむと思うので、ご注意ください。

ヤニス・バルファキスさんの「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」ってどんな本?【概要】

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」は、2019年3月7日に日本語翻訳版が発売された書籍です。

全248ページの本でそこそこボリュームがあり、意外にも難解な書籍なので、集中して読んでも【約4時間】はかかるかなと。

ザックリと内容を紹介すると、

・ギリシャの元財務大臣が自身の娘に向けて「経済×文明論」を解説している
・25ヵ国で翻訳出版されて世界的なベストセラーになった書籍の日本語訳版
・独自の語り口により従来の経済学の通説と正反対な経済論を主張している

という感じ。特に『現代の新しい宗教こそが経済学だ』という主張には驚かされました。

著者の「ヤニス・バルファキスさん」ってどんな人?

著者「ヤニス・バルファキスさん」と翻訳者「関美和さん」のプロフィールも紹介しておきます。

ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)
・1961年生まれ アテネ出身(ギリシャ)
・2015年 ギリシャの経済危機の際に財務大臣を務める
・EUからの財政緊縮策を迫られるなか大幅な財務帳消しを主張
・イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を長年教えていた
・現在はアテネ大学で経済学教授を務めている
・他にも「黒い匣 (はこ) 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命」などの世界的ベストセラーを出版してきた
・2016年に DiEM25(欧州に民主主義を運動2025) を共同設立

関美和(せきみわ)
・翻訳家
・杏林大学准教授
・慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得
・モルガン・スタンレー投資銀行の勤務を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める

りょうかん
りょうかん
(翻訳者の経歴が凄すぎてビビってます…)

ちなみに、ヤニス・バルファキスさんの書籍の中で日本語訳版が出版されている「黒い匣 (はこ) 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命」では、ギリシャ危機の際の葛藤と格闘の様子がノンフィクションで綴られているようです。

こちらもめちゃくちゃ面白そうなので、ぜひ合わせて読んでみましょう!

 

「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」の目次は?

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」の目次は下記の通りです。

プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本

第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?
– 答えは1万年以上前にさかのぼる –

第2章 市場社会の誕生
– いくらで売れるか、それがすべて –

第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ
– すべての富が借金から生まれる世界 –

第4章 「金融」の黒魔術
– こうしてお金は生まれては消える –

第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界
– 悪魔が潜むふたつの市場 –

第6章 恐るべき「機械」の呪い
– 自動化するほど苦しくなる矛盾 –

第7章 誰にも管理されない「新しいお金」
– 収容所のタバコとビットコインのファンタジー –

第8章 人は地球の「ウイルス」か?
– 宿主を破壊する市場のシステム –

エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」

訳者あとがき

りょうかん
りょうかん
ぶっちゃけ中高生年代の娘に向けて書いた内容じゃないかなと・・・(経済学の知識がないと読みにくいかも)

 

読んでいてハッとさせられた文章【紹介】

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」の中で、読んでいてハッとした部分をいくつか紹介してみます。

経済は「余剰」から始まった

娘がオーストラリアに住んでいることから、ヤニスさんはこのような疑問を問いかけてきます。

「どうしてオーストラリアを侵略したのはイギリス人だったのか?」
「どうして逆(イギリスをアボリジニが侵略)じゃなかったのか?」

そもそもこの問い自体にハッとさせられたんですが、その答えとしてヤニスさんの語った内容にも唸ってしまいました。

 すべては「余剰」から始まったと言った。農作物の余剰によって、文字が生まれ、債務と通貨と国家が生まれた。それらによる経済からテクノロジーと軍隊が生まれた。
 つまり、ユーラシア大陸の土地と気候が農耕と余剰を生み出し、余剰がその他のさまざまなものを生み出し、国家の支配者が軍隊を持ち、武器を武装できるようになった。(略)
 だが、オーストラリアのような場所では、余剰は生まれなかった。まず、オーストラリアでは自然の食べ物に事欠くことがなかったからだ。(略)だから農耕技術を発明しなくても生きていけたし、余剰を貯め込む必要もなかった。テクノロジーがなくても豊かな暮らしができたのだ。
[引用:p.37-38]

要するに、自然の恵みに満たされていたアボリジニは経済などを発明する必要がなく、気候に恵まれないイギリスでは、大量の作物を貯め込むために「農耕」や「経済」を発明していったというわけです。

お金の誕生エピソードはよく知られていますが、なぜ「経済」が生まれたのかという視点は今まで持っていなかったので新鮮でした。

りょうかん
りょうかん
アフリカが経済発展しなかった理由も面白かったです!

仮想通貨(ビットコイン)の経済的な欠点【政治的になる意外にも危険性を孕んでる】

僕も馴染みのある「仮想通貨(ビットコイン)」についての言及もされています。

これまで、僕の中での仮想通貨(ビットコイン)に対するイメージは、

・非中央集権的で政治的な圧力を受けない自由な通貨
・ゴールド(金)に変わって世界の基軸価値になり得る

というものでした。(以前のブログでもそのようなことを書いていたはずです)

ですが、ヤニスさんはビットコインの登場によって「通貨は常に政治的であること」を再確認させられたと言います。

技術的(というか理想的)には【非中央集権性】があることは確かですが、現状は一部のビットコイン大量保有者によって市場を作為的にコントロールされるリスクを孕んだままです。

これこそがまさに『通貨は常に政治的であること』を示していると。

りょうかん
りょうかん
反論の余地すらないです・・・

さらに、ビットコインの最大の弱点も、経済的な視点で指摘しています。

それは【マネーサプライ(通貨供給量)の調整ができないこと】です。

一見すると、それが仮想通貨の肝であり最大の特徴(だからこそ誰にも支配されない自由な通貨であるという根拠)にも感じますが、マネーサプライの調整ができないと危機が起きたときに対応が取れないリスクがあると言います。

経済学にそこまで強くない僕には「??」という感覚でしたが、下記の例えを聞いて腑に落ちました。

1929年の金融危機の前後に起きたことが、まさにそうだった。政府はマネーサプライを金の保有量に紐づけていた。これが金本位制だ。金本位制は、ビットコインと同じように通貨と政治の分離を狙ったものだった。イギリス政府は1931年に金本位制を廃止し、ルーズベルト大統領が1933年に市民の金保有を禁じると、やっと危機が和らいだ。[引用:p201]

そう。かの有名な『世界恐慌』こそが、マネーサプライ(通貨供給量)の調整ができない金本位制を採用したことで引き起こされたものだと言うのです。

りょうかん
りょうかん
もしビットコインが世界の基軸価値になってしまうと、世界恐慌が繰り返される可能性もあるのか・・・

 

このように、従来の経済学の常識とは異なる視点(中には真反対の意見もある)で複雑な「経済」を解説してくれている書籍です。

慣れるまでは難解に感じるかもしれませんが、興味のある人はぜひ自分の目で読んでみてください!

「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を読んだ感想【書評まとめ】

この記事では、【書評】世界的ベストセラー本の日本語訳版「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」が凄すぎた!について書いてきました。

正直、途中までは表現が難しくて読むのを諦めそうになりました。ギリシャ人が書いているため例え話に「ギリシャ神話」が頻出するんですが、そもそもの神話を知らないのでイメージができなかったり・・・。

しかし、その表現に慣れてきてからはのめり込むように読んでしまい、最後には少し感動すらも覚えたのが素直な感想です。

そして、終盤に書かれた『新しい現代の宗教こそ経済学だ』の言葉にグッと心を掴まれました

この本で見てきたように、経済についての決定は、世の中の些細なことから重大なことまで、すべてに影響する。経済を学者にまかせるのは、中世の人が自分の命運を神学者や教会や異端審問官にまかせていたのと同じだ。[引用:p235]

さらに、訳者あとがきには、ヤニスさんの言葉として「誰もが経済についてしっかりと意見を言えることが真の民主主義の前提であり、専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断をすべて他人にまかせてしまうことだ」という一文が紹介されています。

きっとこれが「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」で伝えたい唯一のメッセージなんだろうなと。

 

最後に、この書籍の最終ページに書かれているヤニス・バルファキスの言葉を贈って終わります。

君には、いまの怒りをそのまま持ち続けてほしい。でも賢く、戦略的に怒り続けてほしい。そして、機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために。

読み終えた瞬間、世界は180度変わって見える書籍。

僕の目から見える世界もガラッと変わった気がします。ぜひ一読してみてください。

本書の内容まとめ

✔︎ ギリシャの元財務大臣による経済学と正反対な経済の本
✔︎ 世界的なベストセラー本の日本語訳版として出版された
✔︎ 定説になっていた経済学の常識をガラリと変えてくれる

 

というわけで、今回の記事は以上です。

では、また!

 

ABOUT ME
りょうかん
1990年11月 鳥取市生まれ / ブロガー兼WEBライター / 鳥取と熱海の二拠点生活中 / ✍毎日noteを書いてます / Amazonほしいものリスト / お仕事のご依頼は こちら を参照ください