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「そこに居たらホッとできるような場所が街にないと楽しくない。」中川和彦×吉里裕也×岡田良寛【前編】

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どうも、りょうかん(@ryokan_1123)です。

11月18日にスタンダードブックストアの中川和彦さんと東京R不動産の吉里裕也さんをゲストに招いて開催した『人が集う場所』がテーマのトークライブ。
その内容を書き起こして編集しました!

時間が空いてしまい、アップされるのを待ち望んでいた方もいらっしゃると思います。
当日会場に来られなかった方も、会場で聞いてた方も、是非読んでみてください!

全部で2時間分の内容を余すことなく伝えたかったので、長いですが三部編成になってしまいました。
ゆっくりと時間をかけて、スルメをしゃぶるように、読んでもらえたら幸いです。

まずは前編。
それぞれ普段をやっていることを中心に自己紹介をしていただき、どんな場所に人は集まるのかという話に展開されていくまでを。

中編はこちら

後編はこちら

実施:2015年11月18日

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僕は3つのことをしてます(吉里)

岡田 今日は、東京R不動産toolboxをされている吉里裕也さんと、大阪にあるスタンダードブックストアという書店をされている中川和彦さんにお越しいただきました。
それぞれ自己紹介をお願いしたいんですが、まずは吉里さんから。

吉里 吉里裕也です。よろしくお願いします。
ホンバコがオープンするきっかけとなったリノベーションスクール(2014年11月開催)で、りょうかんやホンバコの施工をした本間さんと一緒に、この場所をどうやって活かすか考えてた一人です。

参考記事

岡田 それ以来の鳥取ですよね?

吉里 それがちょうど1年前だったんだけど、それ以降なかなか行くタイミングが掴めないままで。
でも、たぶんお店ってオープンして半年経ってからが本番になってくるんじゃないかと思うので、そのタイミングで何か出来ないかなと思い、書店をしている中川さんと「一緒にホンバコで何かやりましょうか!」ということになりました。

岡田 本当にありがとうございます。
吉里さんは、普段どんなことをされてるんですか?

吉里 僕はざっくり言うと3つのことをしています。
一つ目は、東京R不動産という不動産のウェブサイト。
二つ目は、SPEACという企画・設計の事務所。
三つ目は、toolboxという建材や職人サービス等の販売をするECサイト。
この3つを法人化してやっているんですが、領域をまたぎながら色々と活動をしています。

岡田 具体的にはどんなことを?

吉里 元々、僕らは独立した個人が集まったチームなので、色々なアイデアが出てきては勝手に事業が進んでるような感じです。

東京R不動産は、入り口がウェブサイトというだけで業種としては普通の不動産仲介業なんだけど、それでも今は南は鹿児島から北は山形までの全国9か所でそれぞれ〇〇R不動産(例:金沢R不動産という形で展開してます。
あとは、新しく団地R不動産みたいなことも始めました。使われていない公共施設とそこを使いたい人とをマッチングをするための活用事例や募集案件を書いている公共R不動産というものも始めてます。

岡田 かなり広がってきてますよね。

吉里 その他にも、担当したお客さんや色々なエリアの移住者・UIターン者のライフスタイルを取材してまとめた本を出版してたり(ホンバコに置いてます)reallocalというリアルなローカルを伝えるウェブメディアを運営してたりですね。

reallocal WebSitereallocal

僕の企画もボツにされます(吉里)

岡田 toolboxはどんなサイトですか?

吉里 toolboxは、ペンキや建材だけではなく普通は手に入らないものを売っています。例えば、リノベーションの部分工事だったり工事込みの照明だったり。
でも、こういうのってなかなか難しくて、最近ようやく収支がトントンになってきたぐらいです。

岡田 そうなんですか?
toolboxの売れ筋は、そういう部分工事や工事込みの商品になるんですかね?

吉里 一番売れているのはフローリングや特殊なペンキなどなど、だなぁ。

中川 このサイトにアクセスしてくる人はDIYとかが得意な人が多いの?

吉里 そういう人ばっかりじゃないから、素人をサポートするものもあるんですよ。価格を明確にすることによって、空間のデザインの問題を解決しよう、というのが目的なので。
例えば、使われていない物件を賃貸するとき、どのくらいの準備や家賃設定が必要なのかを一緒に考えたりするんです。使われてない空き家をお試し居住してもうトライアルステイとか、関東から始まって徐々に各地に広まってきてたりもしていて。

岡田 それって、なんで始めたんですか?

吉里 東京の郊外も空き家問題があるんだけど、その原因のひとつは『大家が貸したがらないから』なんだよね。
そんな中でなんとか使わせてもらうと、1ヶ月後には「また貸しても良いよ」という風に態度が変わる。
どんな人が来るのか分からないから貸したがらないんです。でも、良い人が来ることがわかれば、大家にとっては良いことずくめなので。

岡田 なるほど。

吉里 そんな風にやっていくと、空き家を貸したがる大家が増える。そうなると、次に街をホテルにしようという「ネットワークホテル」というのをアイデアに繋がってきて、今それをやってみてる感じだね。
トライアルステイを合わせて、まずは地元の金沢から最低限の設備を整えて始めてみてるところ。

中川 それをする上で、宿泊の免許は取るの?

吉里 取りますよ。AirBnBとかで無免許運営の問題もありますけど、100平米以下の建物を選んで、きちんと建築基準法の用途変更をして、保健所の認可をとってます。お金もそんなにかからないですし。

中川 それをちゃんとしてるのは大きいよね。

岡田 そんなにたくさん事業をやってますけど、社内はどんな感じなんですか?
全然想像つかない人も多いと思うんですよ。

吉里 3つのことを軸にやっているだけど、同時多発的に活動してるような感じかな。社内でも面白いものを積極的に採用するスタイルでやってる。
逆に言うと、僕が提案した企画でも、普通にボツにされたりもする。(笑)

岡田 そうなんですね。(笑)

吉里 そもそも、街づくりに関わり始めたのはここ3年ぐらいなんだよね。
できることは設計と仲介なので、今はそれを活かしながら地域に潜む多様性や自立性を引き出していくことを意識しながらやってるんだけど、
その辺りの話は本を書くことで自分の中の考えを整理できたので、詳しくは本を読んでください。(笑)

カフェへの本の持ち込みOK(中川)

岡田 続いて、中川さん、簡単に自己紹介をお願いします。

中川 1987年に親父が死んで書店を引き継ぎ、2006年(9年前)から本と雑貨とカフェをくっつけた本屋を心斎橋で始めました。1階で本と雑貨、地下ではそれに加えカフェを併設してます。
今は、全部で3つ、茶屋町あべのにも店舗を持ってます。

岡田 どんなジャンルのものを扱ってるんですか?

中川 本はファッション、カルチャー、アート、生活関連、文芸、旅、などと何でも扱ってて。
ルールがあるわけじゃ無いので、自分が好きなものを、雑貨にTシャツやカバンなどを仕入れて売ってます。
基本的にうちの店ではカフェへの本の持ち込みもOK。ただ、汚れると商品価値が落ちてしまう写真集などだけはNGにしてます。

スタンダードブックストア 店内standardbookstore

岡田 書店+雑貨屋+飲食店のスタイルですね。

中川 最近はTSUTAYAのカフェ併設の店がオープンして物議を醸しているせいか、僕の店に関しても同じような話題が挙がってくる。
業界では嫌われ者の立場です。(笑)

岡田 イベントもたくさんやられてましたよね?

中川 普段カフェをしてるスペースを、イベントの規模に応じてカフェ全体を使ったり、仕切ったりして使ってます。
イベントの例を挙げると、例えば10時間ぶっ続けのトークイベントとか。
これは飲みながらやってたから、最後の方とか意味わからんかったけど。(笑)

一同 (笑)

中川 茶屋町は、カフェスペースと本屋スペースとの仕切りが無いので、ワークショップなどでもあれば参加者以外にもやってる様子が伝わってやりやすい反面、トークイベントだと逆にそれが難点になったりもしていて。

岡田 参加費を払わなくても、トークの内容が遠くから聞けちゃうやつですね。

中川 あとは、茶屋町とあべのは商業施設に出展しているので閉店時間21時までと決まっていてイベントの開催のハードルが高かったりもするので、少しなら時間の延長が可能な心斎橋の店でイベントをやるのが多いですし、一番楽ですね。
※ あべの店は、2年前のトットリノススメでトークしたgrafの服部さんがデザインして作った店らしい

吉里 元々本だけを売ってたんでしたっけ?

中川 最初は高島屋の中で普通に本屋をやってたんだけど、雑貨も売りたいな~と思ってて。

岡田 そう思ったきっかけが何かあったんですか?

中川 前にアメリカで本屋やショッピングセンターなどを見て回っていたんだけど、その時に、チェーンの本屋の隣にはスタバがあって、みんながくつろいで本を読んでいる光景を、必ずと言っていいほど見たんですよね。
この仕組みはいいと思い、日本でやってみたいと思ったのが20年前ぐらいで、それがきっかけ。

飲食店はある種の公共性を持つ(中川)

岡田 今回は『人が集う場所』というのがテーマなんですけど、個人的に本屋は気軽に立ち寄れるので、人が集まりやすい場所だと認識してるんですけど、一方でカフェはどう思われますか?

中川 本屋より集まりやすいと思うけどな〜。
一口にカフェって言ってもそこにいる人に惹かれるとか、どれだけそこにいるのが気持ちいいかっていうのが大事なわけで、だから一概には言えないよね。
でも、飲食店はある種の公共性を持ってると思ってる。

吉里 カフェに限らず、居酒屋も一緒なんじゃないかと思うよ。
あと、風呂屋かな。

中川 わかる。体をキレイにするっていう目的の場所と考えたら社会的な使命はなくなるのだけど、それを変えていく、人が集まる場所にしていけばいいんじゃないかと思う。

岡田 リノベーションスクールに参加する前から思ってたことなんですけど、温泉と本っていう組み合わせはすごくいいですよね。

吉里 前にもそれ言ったけど、やりたいよね。

中川 高松の仏生山でやってるみたいだね。

吉里 仏生山では、中古本の販売をしていて、お湯に浸かりながら本が読めるんです。

居心地の良い空間を作りたい(中川)

質問者 お二人は最初から公共性について考えながら事業を進めてましたか?

吉里 いや、そういう風に考え始めたのはつい最近ですね。

中川 僕もそうですね。最初は公共性なんて考えてもなかったです。
イベントを始めた時に、ゲストで来てもらった若木信吾さんっていう写真家さんが、「旅で知らない街に来た時は、本屋かカフェに情報収集しに行く」という話を聞いて、それから意識し始めました。

岡田 意識的に仕掛けるようになったのはどういう部分なんですか?

中川 イベントはやり始めたけど、それも完璧ではない感じはしてて。
イベントっていうモノ自体を変えていかなければならないような気もしてます。

吉里 僕(ら)の立場からすると、オペレーションとかってなかなかできないじゃないんだよね。だから、そういうことが起こる状況を作るって言うのが正しくて。
不動産をしているので、そこに入った人が喜んで何かしたいって思う物件や空間を作り出すように、と意識することが多いです。

岡田 それはどういうことですか?

吉里 例えば今、スナックが流行ってきてるんだけど、僕らを含めた一世代前はスナックに対して良いイメージがなかったんだよね。
でも、今の学生や若い人に聞くと、むしろ行きたがっている。

中川 多分、イメージのストック、かなあ~と。
今の人たちのイメージに違いがあるっていうか、中身自体が違うんだと思う。名前はぶっちゃけどうでもよくて。(笑)

吉里 家でも職場でもないサードプレイス的な部分だったり、話が出来たり、無理やりカラオケ歌わされたり、そんなコミニケーションを取れるみたいな感じかな。

中川 僕は本屋から始めたけど、最初はそんなに積極的にやりたいと思わなかったんだよね。

岡田 そうなんですか!?

中川 でも、今のスタンダードブックストアをやり始めて続けていくうちに、居心地の良い空間を作りたいと思うようになったの。(笑)
で、その時に使うのが、本であり、雑貨であり、飲食であるだけで。
何をやりたいのかっていうのは、たぶんスナック自体とそんなに変わらないんだと思う。

岡田 いかに居心地がよく、その場に居たくなるかってことですかね。

吉里 自分を取り戻せるような、そこに居たらホッとできるような場所が街にないと楽しくないと思う。
本屋は暇つぶしの為の場所でもあって、言ってみれば公園やなんかと一緒だから、街に必要な空間だと思ってる。

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ABOUT ME
りょうかん
1990年11月 鳥取市生まれ / ブロガー兼WEBライター / 鳥取と熱海の二拠点生活中 / ✍毎日noteを書いてます / Amazonほしいものリスト / お仕事のご依頼は こちら を参照ください