熱海経営者特集

【静岡県熱海市】八百屋「REFS」の代表・小松浩二は、この街の暮らしのクオリティをそっと持ち上げる。

観光地は住みにくい。そんなイメージを持っている人は多いんじゃないでしょうか。

そう感じる原因のひとつには、食卓を彩る材料を買える店舗が少ないことにあるように思います。たとえば魚屋。たとえば肉屋。たとえば八百屋。たとえば……

日本屈指の温泉地である熱海市も、そんな街のひとつだったかもしれません。しかし今は違う。だって素敵な八百屋が出来たから。

今回は、2014年春から熱海でも活動をはじめた八百屋「REFS」の代表に、お話をうかがってきました。

小松 浩二(こまつ こうじ)
1979年生まれ、沼津市出身
REFS 代表

REFS(レフズ)は、「Real Food Story」をコンセプトに、生産者が愛情を持って作った農薬不使用栽培の農作物を、その物語と想いも一緒に届ける。そんな事業展開をされています。

元々は沼津で事業をスタートされて、熱海は2店舗目。

REFSが熱海に出来てから、熱海に暮らす人の生活満足度は確実に高まり、食卓の彩りは間違いなく増した。調べたわけじゃないけれど、確信を持って言い切れる。

この記事では、そんな素敵な場所を運営されている小松さんに、事業を始めるに至った経緯や熱海に出店された理由、また苦労してきたことやこれからのビジョンをお聞きしてきました。

(聞き手:りょうかん)
取材日:2018年6月4日

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自分たちの理想的な販売場所をつくろう。

── 今日は取材を受けていただいて、本当にありがとうございます。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?

小松 REFSの代表をしています、小松浩二(こまつこうじ)です。沼津市出身で、今年39歳になります。

── これまでの経歴を簡単に教えてもらってもいいですか?

小松 大学卒業後は、「食」の勉強をするために食品会社で5年間勤務してました。その後、カナダで1年間過ごして、帰国後に1年間かけて起業準備をしたような形ですかね。

起業準備期間中は生産者の元に行って畑のお手伝いをしたりして下地を作り、2009年の7月に「やさいのセレクトショップ REFS(レフズ)」を沼津でオープンしました。

── 元々起業をしたい気持ちがあったんですか?

小松 そうですね。小さい頃から、なんとなく存在する社会の常識のなかで動くのが苦手だったりしたので、自分でやりたいという気持ちはありました。

実は大学を卒業してすぐに起業しようと思ってたんですけど、自営業をしている父親から「色々と勉強してからにした方がいい」とアドバイスを受けて、結局29歳で起業をしました。

── 起業する分野は、最初から「農業」に絞っていたんですか?

小松 いや、決めてはなかったですね。大学時代に1年間休学してユーラシアを旅している時に「食を発信すること」と「宿を運営すること」を考えるようになって、大学卒業してすぐの頃はゲストハウスをやろうかと思ってました。

会社員を辞めてから1年間カナダで過ごしたのも、実は「宿」の勉強を兼ねてたんですよ。それで帰国後、金沢で良い物件があったので、そこで宿をやろうとしてました。

── 金沢と言えば、今やゲストハウス激選区ですよね。

小松 その頃はまだユースホテルしかないような状態でね。もしそのときにゲストハウスを始めてたら、僕の人生も大きく変わっていたかもとは思うんですけど(笑)

でも、改修費用に約1500万円かかるという話になって。当時はリーマンショックが起きたりもして、ちょっと踏み切ることが出来なかった。それで、先に食のことを考えようと。

── それで「やさいのセレクトショップ(八百屋)」をすることに…?

小松 最初は八百屋ではなく、野菜などの食材を使った商品を企画して卸業をしようと思ってたんです。なんですけど、考えていくうちに、いい食材素材を集めてるだけじゃなくて、自分たちの理想的な販売場所を作っていかないとと思うようになった。

朝収穫された新鮮な野菜を生産者から直接仕入れる。そんな究極の八百屋を目指そうと。

共感してくれるファンを獲得していく。

── 最初は沼津で始められたんですよね? その時はスタッフを雇用したりは…?

小松 はじめから上手くいくはずがないと思ってたから、最初は1人で朝の仕入れから店舗での販売までを全部やってましたね。

── めちゃくちゃハードですね……。オープンしてからの沼津での反応はどうでしたか?

小松 半年かけて素敵な生産者を見つけて意気揚々とスタートしたけど、実際始まったら知り合い以外のお客さんは全然来なくてね(笑)

目の前にすごく良い野菜があるのに、全く売れない現状を見て自分の力のなさを感じた。これはなんとかしなきゃと、レストランさんとかに営業したり、野菜を配ったりして。

── そうだったんですか!? じゃあ店舗で直接買われるより、レストランなどに卸す割合の方が多かったり…?

小松 いやいや、店舗で買ってもらう方が多かったですよ。

実際のところ、ターゲットをどこに絞るかも色々と悩んだりもしまして。一時期、地元の飲食店さんだけじゃなく東京に卸すことも試してみたりしたんです。だけど、他の産地の野菜と競争になったり、供給が不安定だと使われなくなったり、消費されていく感覚を抱くようになって。

── あー……、わかる気がします。

小松 なので、やっぱり地元の一般家庭の方を意識しようと決めまして。それから「宅配は来店したことのある人しかしない」などのフィルターもかけたんですよ。

そうすると、東京からわざわざお店に来てくれたり、実際に見て話して買ってくれた人がファンになってくれたりして。そうやってジワジワとお客さんが増えていった感じですね。

── 共感してくれるファンをしっかり獲得していったわけですね。そうやって沼津で店舗運営されてた中で、熱海にも出店を決められたのはどういう経緯があったんですか?

小松 沼津でやってると東伊豆の食材がなかなか集められなくて。それで伊豆半島の東に拠点があると良いなと思って、候補に挙がったのが熱海だったんです。

沼津の店舗に来てくださっていた熱海からのお客さんが「熱海には地元の野菜が買える場所が無い」と言っていたのを聞いていたんですよ。それで熱海の街を歩いたりしながら1年ぐらいかけて観察をして、最終的にこの場所にしようと出店を決めました。

── 熱海に決める上で、ネックになった部分などはありましたか?

小松 熱海はやっぱり観光客が多いので「観光で来た人がターゲットになり得るのかな」という部分は悩みましたね。観光客をターゲットにしようと思っても、駅前にはあまり物件はないですし。

でも実際に始めてみると、熱海に住んでいる人・週末に熱海に来る人などがよく使ってくれていて、REFSで扱う食材と出会うことを面白がってくれている。別荘の人とかも想定はしてなかったんですけど、特に喜んでいただけているので、結果的に良かったんじゃないかなと思ってます。

── たしかに別荘の方にとってはずっと求めてたお店かもしれないですね。今の店舗は駅から遠すぎない場所でもあると思うんですが、探す際のポイントはありましたか?

小松 「駅前にないならちょっと離れたところはどうだろう」と考えていたときに、ちょうど「KASHI KICHI」が出来たりして。それでこの辺まで人の流れが来そうかなと思って決めました。

この物件自体は違うお店が入る可能性があったみたいだったんですけど、大家さんが「街に良い野菜のある八百屋があったらいいよね」と優先的に交渉権をもらえて。縁があったんですかね。

生産者側の仕組みを整備したい。

── REFSの運営をする中で苦労している点を教えてもらえますか?

小松 毎日苦労です(笑) でも、一番は需要と供給のバランスかな。畑でたくさん作ってもらいたいけど、作ったところで売れない可能性もある。そうなると不安定供給になりがちなんですよね。

── たしかに…。そのバランスを取るためには、何を意識されてるんですか?

小松 提案力ですかね。お客さんに対して、品物がない時期はないことをしっかり伝えたり、たくさん採れたものを奨めて買ってもらったり。

販売力とも言えるかもしれないけど、売ることがしっかり出来れば不安定さを解決することができるのかなと思ったりしてます。

熱海店2Fの「REFS Kitchen」にて。
これも販売力のひとつかも。

── 売る力。納得です。提案力に関連するのかわかりませんが、「加工品」も豊富に扱われてますよね?

小松 素材自体が美味しいので、その味を活かすために化学調味料・保存料の少ない加工品を扱うようにしてますね。元々作られていた商品をベースに、こちらのリクエストを加えて新たな商品を作ってもらうこともあります。

ただ、保存料が少ないからこそ賞味期限が短い。だからこそ、うちは販売力をつけないと扱えないし、販売力を持たないと生産者にも作ってもらいにくい。そう考えるとやっぱり提案力・販売力は必要だなと思いますね。

棚いっぱいに並んだ加工品類。

── 販売力というのは、自分たちが大事にしていることを貫き続けるためにも必要な力なのかもしれないですね。

小松 その上で、もうちょっと生産者の人たちが楽しく野菜をつくれる仕組みがつくれたらと思ったりしてますね。それができると、もっと良い商売になる。

ちなみにね。今の日本のオーガニック食品の需要って1%しかないんですよ。対してアメリカでは13%に達してる。東京オリンピックを契機にオーガニック志向の強い外国人が大勢訪れるので、日本でもオーガニック野菜を使う意識が一般化するんじゃないかと言われてるんです。

そのときのためにも、生産者側のしっかりした仕組みを作っておかないとなと思います。だからこそ、今やっていることをきちんと継続してやっていきたいですね。

── 生産者側の仕組みを整備するためにも、大事なのは販売力になりそうですね。今後の事業展開はどのように考えてますか?

小松 やっていることを有機的(オーガニック)に展開出来たらと思ってますね。野菜を販売する店舗だけじゃなく、その周りに関すること。イベントを企画したり、地域メディアをつくったり。そして沼津で宿をやるとか。

八百屋でチェックインして、そこで買った野菜を自分で調理して食べて泊まれるみたいな形とか。そういう展開を目指して準備してるところです。

── 八百屋プラス宿の形は素敵ですね!小松さんの仕掛ける宿は面白そうな予感しかしません! 今後の動きも楽しみにしてます!

今日はお忙しい中にも関わらずありがとうございました!

小松 浩二(こまつ こうじ)
1979年、静岡県沼津市生まれ。大学時代に1年間休学。ユーラシア横断で29ヶ国を巡り、食の素晴らしさに気づく。卒業後は食品会社に5年間勤務。離職して1年間カナダでアウトドアを学び、帰国後に起業準備を始める。半年ほど生産者の元へお手伝いに行くなど下地づくりをして、2009年に「REFS」をスタートした。

REFS 熱海店
住所:静岡県熱海市咲見町7-29
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜日
電話:0557-48-6365

(この記事は、独自制作した特集記事です)

文章/撮影:りょうかん
写真提供:小松浩二

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ABOUT ME
りょうかん
りょうかん
1990.11.23、鳥取生まれ。 NPO法人atamistaゲストハウスあなごのねどこホンバコ(オーナー)を経て、今。 全国を巡りながらブログで生活中。 / 仕事の依頼は【料金表】を参照ください / ✍noteも書いてます / 支援大歓迎