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熱海経営者特集

【静岡県熱海市】「お客さんの喜ぶことをする」やきとり鳥満の店主・矢島篤史さんに聞く、地元に愛される秘訣。

熱海観光の際に立ち寄る飲食店と言えば、昔ながらの喫茶店、魚介料理の和食屋さん、懐かしのレストラン。このようなところが王道でしょう。

でも、地元の人に愛されているお店の方が、その街の本当の良さを感じられるというものです。

今回は、熱海の人が愛してやまないお店「やきとり鳥満」の店主に、お話をうかがってきました。

矢島 篤史(やじま あつし)
1981年生まれ、上尾市出身
やきとり鳥満 代表

鳥満は、この記事を書いている僕自身が熱海で暮らしていた頃、頻繁に通っていたお店のひとつです。

いつも地元の人で溢れ、訪れれば誰かしら熱海の人がいる。大袈裟かもしれませんが、そんな印象を強く抱いていました。

なぜ地元の人に愛されているのだろう。そんなことを考えながら取材をしましたが、その答えが見つかったような気がします。

「お客さんの喜ぶことをする」
「どれだけお客さんのことを想えるか」
「来たお客さんを満足させよう」

これを読んだら、きっと熱海の鳥満に行きたくなる。きっと「レバー」が食べたくなる!

(聞き手:りょうかん)
取材日:2018年6月4日

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熱海に来たきっかけは「家出」。

── 今日は開店前の忙しい時間にありがとうございます。まずは自己紹介をお願いしてもいいですか?

矢島 熱海市渚町で「やきとり鳥満」を経営している矢島篤史(やじまあつし)です。現在37歳。お店自体は始めて9年目、独立してから6年目になるのかな。元々は埼玉県上尾市の出身です。

── 熱海に移住された形になると思うんですけど、そのきっかけって何だったんですか?

矢島 高校卒業する前に家出をしたの。電車で西に向かってなんとなく降りたのが熱海だった。随分遠くに来たもんだと思ったけど、大人になってみたらかなり近いというね(笑)

熱海には旅館ホテルが多くて食住付きの仕事があったから、そのまま居着いちゃった。

── まさかの家出きっかけ(笑) 自分でお店をやろうと思い始めたのは、いつ頃からだったんでしょう?

矢島 27歳ぐらいの時だったかな、経営者6名が話をする講演会へ同僚に無理やり連れて行かれてさ。話をされた経営者のひとり、居酒屋てっぺんの大嶋啓介さんという人の話に強烈に惹きつけられてね。

「仕事はもらうものじゃない。自分で作り出すものだ」「飲食店から日本を元気にする」「僕は料理は一切できないけど、料理のできる仲間を集めて最高の飲食店を作る」みたいな話だったんだけど、その話に強烈に惹かれて飲食店で独立することを考え始めた。

『自分でやればいい』『自分でやらなくてもいい』という両方を同時に知れたのが良かったよね。

── カッコいい話ですね。飲食店で独立することを決意されてから、実際に開業するまではどういう経緯があったんですか?

矢島 その講演会を聞いた翌年に、以前働いていたラーメン屋の店主の人が「焼き鳥部門を始める」と言い出してね。その店舗を手伝ってみないかというお誘いがあったわけさ。

その人はすでに3店舗の飲食店を経営されてるエネルギーのある人だったから、この人の元でノウハウを盗んで独立を目指そうと思って、その誘いを受けた。

── じゃあ最初は焼き鳥部門を任された形だったんですね。

矢島 始めはあくまでサポート。その後すぐ、思いかげずに任されることになったね。それで3年間やった後、「自分自身の手でやってみるか?」という話になって、お店を譲ってもらった。ちょうど家庭を持ったタイミングだったかな。夢がポンっと叶ったから、そこからはガムシャラに邁進していったね。

移転当日、財布にはお札が一枚もなかった。

── 店舗を譲ってもらって独立してからは、トントン拍子でしたか?

矢島 全然そんなことはなく、いきなり壁にぶち当たったよ(笑)

物件の名義変更などをしてたときに、敷金礼金を払って引き継ぎたいという話がしたかったんだけど、当時の店舗の大家さんが一切連絡に応じてくれなくなってね。

── それは…、もしかして契約が…?

矢島 そう。結局3ヶ月後に「あなた方は私たちの物件の不当使用者です」と書面が届いて。それで2週間後には退去しなきゃいけないことになってしまった。

移転先もすぐには見つからなくて、仲間や友達やお客さんも協力してくれながら新たな場所を探し回る期間がしばらく続いたのかな。

── 新しい物件(今の場所)は、どのような経緯で見つけられたんですか?

矢島 当時この場所では別のお店が営業していたんだけど、そのおっちゃんに相談してたら「そろそろ辞めようかと思っていたから、お客さんに説明する時間として2週間ほどもらえるか?そしたらこの場所を使えばいい。」と言ってくれて。

── それは良いタイミングで良い場所が見つかりましたね!

矢島 でも、小汚いお店だったから、友達総動員でひたすら掃除するところから始めた。2ヶ月ぐらい働いてなかったから改装にかけるお金もそんなになくて、なるべくそのままの状態で使えるようにと。

開店できる日の前の晩には、所持金が嫁と2人でラーメン食べたら餃子がギリ頼めるかどうかぐらいの感じだったからね(笑)

移転当時1歳だった息子の手形

── 本当にギリギリ……。今の店舗に移転されてからは順調に…?

矢島 まあ順調っちゃ順調だけど、困ることがあるのは「人」の問題かな。勤めてもらって、教え込んでも、辞めちゃうことが続いてね。俺の伝え方が下手なのかもしれないけど。

今は丸3年ほど勤めてくれているスタッフがいるから、安定して助かってる。

── 飲食店の人材問題は、どこの店舗でもありますよね。

矢島 飲食業は低賃金が当たり前のようなところがあるからね。もっと給料を出してあげたいけど、爆発的に売れないとなかなか難しい。

お客さんが喜ぶことをする。

── 鳥満と言えば「レバー」が人気だと思うんですが、メニューはどうやって決めているんですか?

矢島 意識してるのは『スタンダードかつオリジナリティ』というところ。焼き鳥というジャンルは難しくてね。「ねぎま・つくね・皮」みたいなスタンダードメニューは当たり前に注文される。でも、その上でお店の特徴を別に出さなきゃいけないという想いもある。

うちの場合は、それが上手くマッチした素材が「レバー」だった。

鳥満人気No. 1メニューのレバー(手前)

── ホントに冗談抜きで、鳥満のレバーはこれまでの概念を変わるぐらいの美味しさだと思ってます!

矢島 ありがとう(笑) だけど、レバーは臭い&硬いというイメージがあって、名前だけで嫌いという人も多いからね。それを払拭しようと「レバー1本50円」というキャンペーンをやったこともある。

──  そんなことまで…。そのようなキャンペーンを実施することも含めて、経営をする上で大事にしていることはありますか?

矢島 お客さんが喜ぶことをしようということは意識してるかな。自分たちが楽しむことももちろんだけど、とにかくお客さんが喜ぶこと・楽しいことを提供するのが飲食店だと思うから。

美味しいものを提供するのは当たり前で、どれだけお客さんのことを想えるか。お客さんを喜ばすためなら何をやっても良い、ルールがないというのが飲食店のいいところだからね

筆者が必ず注文する砂肝(手前)

── お客さんにもその想いは伝播してる気がします。

矢島 特に熱海は地元感が強いからさ。いい意味で村社会。縦横の関係性を大事にする習慣が根強く残ってて、相手が喜ぶことを提供すると良い循環が生まれやすい。

地域の行事とかでお手伝いしたりすると「あいつのお店を使ってあげよう」って後日ちゃんと来てくれたりするからね。この文化は無くしちゃいけないと思うし、次世代にも継いでいってほしい。

── 地元の方の来店割合が高そうですもんね。

矢島 そうそう。大体7割ぐらいは地元の人が使ってくれてる。意識して狙ってたわけじゃないけど、来たお客さんを満足させようと日々やってきて気づいたら地元の人が多くなってた。それも地元感の成せる部分な気がするね。

いざという時、自分が動ける状態に。

── もう少し踏み込んで聞いていきたいんですが、今後の目標みたいなことは考えられてますか?

矢島 将来的には多店舗展開したい想いはある。そのためにも、まずは今の場所で売上を1.5倍・2倍になることを目指したいなと。たとえば、2階も使って席数を増やすだとか、デリバリーやテイクアウトを増やしていくだとか、まだやれるところはあると思うからさ。

来年になるとスタッフが1人増える。その子をしっかり育てて、3年以内には目標を達成したいね。

── スタッフの募集は、どういう風にされているんですか?

矢島 ほとんど店内の掲示だけかな。有料の求人広告を出したとしても反響は少ないし、採用した人もすぐに辞めちゃうという話はよく聞くからさ。

だったら直接的に声をかけて募集していることを伝えて、数年後にでも「ここで働きたくなりました」と言ってもらえるようにした方が確実なのかなって。

── 僕も飲食店経営をしてたので、非常に共感します。

矢島 とりあえずで採用できることよりも、長く続けてもらうことの方が大事だからね。なんなら「自分が持ってる夢を叶えるための土台にしたい」という人の方が、店にとってはエネルギーになる。

その上で、その子に夢を見せれるかどうかは俺次第。そこが俺の頑張りどころだなと思ったりもする。

── それは、ご自身の「夢を叶えてきた」という原体験から湧き出てくる考えなんですかね?

矢島 自分の考えをプラスに変えたら、自分の置かれてる環境もプラスに変わる。そしたら、周りの対応もプラスに変わってくる。それが絶対的に正しいとは思わないけど、少なくとも俺はそれで状況が変わってきた。

目の前にいる人に感謝ができて、その人と楽しいことを作っていこうという意識があれば、自分の環境ってどんどん良くなるしかないと思う。

そういうことを自分の手元に来た子には伝えていきたいよね。

── すごく素敵だと思います!

矢島 そのためにも時間を上手く作れるようにならなきゃと思う。今は仕事に追われてるけど、スタッフに任せられる部分は任せて、俺はお店にお客さんを引っ張ってくるようなところに力を注がないとと。

現場に居なきゃ見えないこともあるけど、現場から離れて俯瞰した視点でないと見えてこない部分もあるし。それに、いざという時に自分が動ける状態にしておかないと次のステージにはたどり着けない。それができる環境を上手く作っていきたいね。

── いざという時に動ける状態が作れるかどうかは本当に重要ですよね。自分も経験したからこそ痛感します…。今日はありがとうございました!鳥満が今後もどんどん繁盛することを心から祈ってます!

矢島 篤史(やじま あつし)
1981年、埼玉県上尾市生まれ。高校卒業前に家出をしたことを機に、熱海に移住。2009年に「やきとり 鳥満」の店主を任され、2012年に独立。地元に根ざし、地域の人に愛されるお店となっている。

やきとり 鳥満
住所:静岡県熱海市渚町16-14
営業時間:16:00~23:00
定休日:不定休(基本的に無休)
予約:0557-81-8728

(この記事は、独自制作した特集記事です)

文章/撮影:りょうかん

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ABOUT ME
りょうかん
りょうかん
1990.11.23、鳥取生まれ。 NPO法人atamistaゲストハウスあなごのねどこホンバコ(オーナー)を経て、今。 全国を巡りながらブログで生活中。 / 仕事の依頼は【料金表】を参照ください / ✍noteも書いてます / 支援大歓迎